茨城を代表する食品としておなじみの「納豆」。 今や全国の食卓に欠かせなくなった納豆の生産を支える会社が、小美玉市にあります。
おみたまくらし 「食と農のプログラム」現地プログラム最終回となるDAY3では「納豆と小美玉」をテーマに納豆の栄養や作り方の秘密、はじまったばかりの新たな地域との接点を学びました。
さらに今回は、小美玉市で食や農のチャレンジをはじめた女性たちが登場。それぞれの取り組みを語っていただきました。
納豆メーカーとして全国で知られるタカノフーズ株式会社は、昭和7年に小美玉市で創業した小美玉とゆかりの深い食品メーカーです。創業から80年以上たつ現在も、本社と工場を小美玉市に置いており、市内に2つある工場での生産は、タカノフーズから全国に流通する納豆全体の約40%を占めています。
今回納豆とタカノフーズについて教えてくださったのは、タカノフーズ(株)営業推進部門の宮本幸規さん。 「小美玉市に根付いた企業として、地元の人に自分たちの納豆を支持してもらえるのがうれしい」と話します。この日も自ら運転する車で、市内に直接納豆の納入に行ってきたのだそう。
納豆は、食物繊維や鉄分、カルシウム、マグネシウムにイソフラボンなどのも摂ることができる健康食品。大豆を発酵させてつくられることは有名ですが、発酵によってビタミンKや葉酸などの栄養価が大幅にアップすることは、あまり知られていないかもしれません。説明をきいた会場からは驚きの声があがりました。
タカノフーズでは、現在2500種類の納豆菌を研究・培養していますが、本来納豆菌は、元は稲藁や土の中といった自然界に存在している菌なのだそう。タカノフーズではそれらを採取して研究、特性をデータ化して最適な納豆を作っています。
「納豆菌の種類にはそれぞれ、納豆の仕上がりがより柔らかくなるもの、ねばりが出るものなど特性があり、当然、できる納豆の味も変わってきます。作りたい納豆のイメージや機能に合わせて納豆菌と大豆の組み合わせを変えて商品開発をしているんです」
タカノフーズの納豆は全て品種を指定した契約栽培。より納豆に適した大豆の研究もしており、品種開発もしています。
つづけて宮本さんは、タカノフーズの最近の取り組みとして、2021年の9月に設立したばかりの、家畜向けの飼料を扱うタカノバイオ株式会社(以下タカノバイオ)の存在を教えてくださいました。
タカノバイオでは、現在、酪農においてタカノフーズの納豆づくりのノウハウを生かし、お手伝いが出来ればと試行錯誤しているとのことです。
「小美玉市を支える農業と酪農を、私たちは『納豆』でも支えられたら。飼料で小美玉のみなさんと関わる機会が増えるのが嬉しい」と最後に話してくれました。
タカノフーズ株式会社
http://www.takanofoods.co.jp
つくば市から小美玉市へ移住後、2021年の3月から烏骨鶏とアローカナの飼育と卵の販売をはじめた林百合子さん。
うこっけいおみたまごファームでは、一般の市場に出回ることが少ない烏骨鶏とアローカナの卵を専門に扱っています。鶏は全て平飼いで育てられており、日々、希少な卵を求める人が林さんのもとを訪れているのだそう。
はじめは、ホームセンターで購入した2羽の名古屋コーチンからスタートしたおみたまごファーム。現在では600羽の鶏を飼育しています。ただし、烏骨鶏は高い栄養価がある反面、産卵数が非常に少ないのが特徴。ケージ飼いのスーパーなどで売られている白い卵を産む白色レグホンは1年で280個ほど産むのに対しおみたまごファームの平飼い烏骨鶏は1年で80個しか採卵ができないのだそう。最近では、販売する卵が売り切れになってしまう日も多いのだとか。
「烏骨鶏の卵は、小さく食べ応えがないと言われることもあるのですが、栄養価は満点。血液サラサラ効果があり、美容にも良いと言われているんですよ。ビタミンCと食物繊維以外を含む完全栄養食という呼び方をされることもあります」と、卵の特徴を語る林さん。栄養もさることながら、味もとても美味しいのだそう。生でも甘く感じられるというから驚きです。
実は、林さんは自身で飼育を始めるまでは生の卵を食べることができなかったのだと言います。 「もともと生卵は苦手だったのですが、自分で育てた烏骨鶏の卵をはじめて生で食べた時、『甘くて味が市販の卵と全然違う!』と感動したんです。以来、生卵は食べないというお客さんにも、生食をおすすめするのですが、後日『生でも美味しく食べられた』と報告をもらうことが多くて、本当にうれしくなります」
最近では、アローカナという種類の飼育もはじめたというおみたまごファーム。南米原産のアローカナの卵は、うすい青色の殻が特徴で、烏骨鶏よりもスッキリとした味わい。こちらも栄養価が高く、お客さんにも好評なのだとか。今年からすべて自家配合飼料となり、玄米を主に、魚粉や大豆かす、糠、牡蠣殻などを与えているため、レモンイエローの黄身が特徴とのこと。
茨城町のお菓子屋さんとコラボしてお菓子を開発中だという林さん。貴重なおみたまごファームの卵を食べられる機会は、今後増えてゆきそうです。
うこっけいおみたまごファーム
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子供の頃の夢のひとつがケーキ屋さんだったという稲毛幸子さん。結婚後にカフェで働いたのち、自分の店をもつという夢を叶えました。
カフェFreewheelinG(フリーウィーリング)を小美玉市でオープンしたのは2017年のこと。 (※2022年3月現在は休業中)
構想段階から、お店は夫婦共通の趣味でもあるDIYでつくることを決めていたそう。リノベーション可能な物件を探しまわり、図面や構想をまとめて大家さんと交渉、晴れてDIYの許可を得たのだと言います。
無事に物件が決まったあとは、予定通り夫婦でリノベーションを開始。3〜4ヶ月かけてお店のオープン準備を整えました。
「人が集まり、身体に良いものを食べて、楽しく過ごす空間をつくりたかった」と稲毛さん。
お店で出す食事のこだわりは、自身の妊娠をきっかけに意識するようになったという食品添加物を使わないメニューを提供すること。野菜もできる限りオーガニックや地元産の減農薬のものを選んだのだと話します。
FreewheelinGでは、ランチ営業を中心に行っていましたが、地域の人がワークショップを開くための会場として活用したり、まちに住む人の会議の場所として利用されることもあったのだそう。
「まちの人には色々な用途でお店を使ってもらいました。お店という『場』を自分で持ったことで、たくさんの人に集まってもらえて、友人も増えたんです」と稲毛さん。
「まずは行動をおこさなければ、お店も、地域との関係も何もはじまらなかった」と続けます。
現在、お店は休業中ですが、営業時のお客さんや、地域の住民とは今でも交流が続いているのだそう。自分でお店をはじめたからこそ、出会いがあり、今があると振り返りました。
FreewheelinG ※現在休業中
https://www.facebook.com/freewheeling.2113/