小美玉市移住定住サイト

おみたまくらし

小美玉市と人々とストーリー

2023.03.22 UP
#8
SHARE

【環境×学び】知ることで少しだけ景色は変わって見える。小美玉で伝えたいこと

「この部屋の窓から外を見ては『あの畑には、どんな野菜が育つのかな』と考えてたりしています。私、野菜の芽を見て何の野菜か当てるのがちょっとした特技なんです」

春の気配も深まった2月の末。午後の日差しが差し込む明るいリビングで、迎えてくれた前川芽依(まえかわ・めい)さんが口を開く。

「夫と結婚してそろそろ家を建てようかという話が上がった時、住む場所は夫の実家がある小美玉市にすんなりと決まりました。『周りに畑があって、近くに牛もいっぱいいるの?うん、それも面白そうで良いんじゃない』って」

前川さんは、群馬県出身。畜産や農業に携わる両親の元で育ち、大学では、北海道の広い大地で野生動物の保護や土壌環境などの研究をしていたという経歴の持ち主だ。自宅の完成と共に2020年に小美玉市に移り住んでから約2年が経った。

「小美玉の暮らしは、何でも揃うような便利さはないかもしれませんが、自分で手の届く範囲の中だけでも楽しみや挑戦できることが溢れていると気付かされる毎日です。自分らしくいられるという感覚に近いかもしれませんね。それに、小美玉の自然の中で暮らしていると、ちょっとした瞬間に今まで経験してきたことが繋がっているんだなと感じることが多くあるんです」

肩肘を張らない毎日は、よそゆきの自分を繕わなくてもよい分、すぐ足元にある幸せにも目を向けることができるのだと話す。

「ほんの些細なことなのですが、珍しい色の野鳥や昆虫、植物を見かけては『今日はラッキーだったね』なんて、2人の子どもたちと分かち合ったりしています」

現在、子育ての真っ只中でもある前川さんだが、小美玉にやってきてから決めた事がひとつあるという。それは「生き物や環境など、地域の身近な事象を前川さん自身の言葉で子どもたちに伝え、話を出来るようになること」。

それは、これから小美玉市で大きくなり、いつか外の世界を知るであろう子どもたちが、将来振り返る「自分が育ったまち」が、価値があるものだと思えるような記憶をつくりたいという願いからだ。

いつか、子どもたちが振り返る故郷の記憶を伝えたい

前川さんはこんなエピソードを語ってくれた。

「ある日、子どもと近所にある仲丸池公園に行ったらカメラを構えているおじいさんが居たんです。何を撮っているのか聞いてみたら『ツツドリ』という渡り鳥だと教えてくれました。どうしてまち中の公園に渡り鳥がいるのかと後で調べてみると、ツツドリは毛虫を好んで食べる鳥で、桜の葉に集まる毛虫を求めて公園にやってきたようです。なんてことのない事なのですが、ちょっとだけ深く知ることで、価値や楽しさがもっと大きく感じることがたくさんあると思うんですよね」

仲丸池公園には、見事な桜の樹がある。ここに渡り鳥がいる理由や餌がある理由、観察出来る限られた時期など背景を知ると、身近な「あたりまえ」の景色の解像度が上がるから不思議なものだ。

前川さんは続ける。

「確かに、もっと野生の生き物がいたり自然が豊かな土地というのは、小美玉以外にもある。でも、ここに住む人が見ている「あたりまえの景色」を構成するのは他でもない『小美玉の環境』で、この場所にしかないものです。それに、身近な環境や生態系からも世界で起こっていることに思いを馳せる事が出来ると子どもたちも知ってくれたらいいなと思います」

この土地で育つ子どもたちがいつか外の世界を知った時、振り返ってふるさとの価値に気づけるような、小さな体験や知識を伝えていきたい。前川さんの話はそう続く。現在の自分に出来るのは家族や近所の人とのほんの小さなやりとりだが、近い将来、他の住民や教育機関の力も借りて地域の環境を知ろうとする輪が広がっていったら、小美玉を好きな人が、そして世界に目を向けられる子どもたちが、もっと増えるのではないかとも考えているそうだ。

新しい学びが、自分の背中を押してくれる

さて、そんな前川さん、最近もうひとつ挑戦をはじめたことがある。自宅ではじめたカイロプラクティック※(以下カイロ)サロンだ。施術の資格を取得したのも小美玉にやってきてからの挑戦だと言うからそのスピード感に驚く。

※カイロプラクティックとは、骨盤や背骨の歪みを徒手によって矯正し、歪みの原因である生活習慣を総合指導法によって改善させることで身体の健康にアプローチするヘルスケアのこと

「タイミングが重なったというのもあります。小美玉にはちょうど子育てのスタートに合わせて引っ越してきたこともあって、当時は家族以外とのつながりもあまり無かったんです。将来、子どもの手が離れた時に母親としてではない『自分』に何も残らないのは何だかさみしいなと思い始めた頃に、たまたま知ったのがカイロでした」

と前川さんは回想する。

実際に講習を受けてみると、学問の分野としても興味を惹かれたという。身体の理論を踏まえ施術することで求める結果を得るという科学的な側面や、栄養学も合わせたアプローチも性に合っていたのだと振り返る。元来、一度興味を持つと黙々と打ち込むタイプ。自宅でのサロン開業までそう時間はかからなかったそうだ。

また、新しい挑戦は移住先でのコミュニティづくりにも早速一役買った。

昨年は、空の駅そ・ら・らでのイベントや、市が主催するOMITAMA YATTEMIRU PROJECTへも参加し羽鳥駅前マルシェの出店も経験。その度に関係者やお客さまなど新しい繋がりが生まれているのを感じているという。

実は元々「はじめてのコミュニティには緊張してしまう方」だという前川さんだが、新しいツールを手にすることで、学びへの意欲が少しだけ背中を押してくれるのだそうだ。新たな出会いや、様々な経験を得た現在、本場海外での解剖学の勉強などさらに夢は広がっていると言う。

小美玉の足元からどこまでもひと続きに繋がってゆく前川さんの世界。次はどんな発見やチャレンジが待っているのだろうか。

他の記事を読む
  • #11
    2024.03.22 Up

    レンコン栽培で有名な玉里地区を車で走っていくと、霞ヶ浦が目の前に広がった。櫻井さんの自宅周辺には、のどかな風景が広がっている。車を停めて家に向かうと、もうすぐ2歳になる息子さんを抱いた妻の有加さんが笑顔で出迎えてくれた。…

  • #10
    2024.03.12 Up

    稲毛さんは1982年6月生まれの41歳。小美玉市で生まれ育つ。子どものころから工作など「ものづくり」が好きで、中学・高校とギターに興味を持ちバンド活動に夢中になる。高校卒業後はギター製作の専門学校に入学。在学中から木工や…

  • #9
    2024.02.29 Up

    井能さんは1994年生まれの29歳。小美玉市で生まれ育ち、高校卒業後は都内の調理師専門学校へ進学。社会人になり、子どものころに憧れていた料理番組の収録に携わるなど、自身の「やりたい」と思うことにチャレンジをし続けた。いつ…